左ワッペン)あらゆる災害に対応するという意味で、台風・火山・地震・津波をモチーフにデザインされた救助隊のエンブレム。 山口県岩国市の錦川河口の三角州にある米国海兵隊岩国航空基地は、本州で唯一の米国海兵隊の航空基地です。航空基地であり、毎日数多くの軍用機が飛び交うのはもちろん、岩国基地内には日中で1万名以上、夜間でも5千名の人々が働いています。ひとつの都市とも言うべき基地内部はアメリカ合衆国。そこで、アメリカの消防法に基づき署所が配置され、車両をはじめ、防火衣、資機材などすべてがアメリカ規格。また、訓練内容やスケジュールも本国の基準にあわせて実施されています。 年間出場件数は450から500件。火災が20件で救急が150件。救急出場に際しては軍病院から軍医2名が乗車した救急車が出場し、同時に消防隊から消防車も出場する方式がとられています。また、傷病者が日本人の場合は基地内の軍病院ではなく、基地外の一般病院に搬送されます。ちなみに、基地内の自動車制限速度は時速30kmから40km。そのため交通事故も少なく、救急対応は一般負傷の対応が多くなっています。出場しても誤報というパターンも多く、これが150件程度となっています。他にも基地ならではの出場として航空機関連事故に備えての滑走路脇での待機が50件ほどあります。 岩国航空基地消防隊では24時間をAチーム・Bチームに分けて、それぞれ17名体制の2交代制で勤務にあたっています。岩国航空基地の面積は7.3㎢。「入電から5分以内に現着できる様に消防署を設置する」というアメリカの消防法に基づき、基地内には1署1分署が設置されています。メンバーは署長、次長以下、A・B各チームに1名の副隊長、本署(ステーション1)にキャプテン・機関員・消防士が各2名、水上分署(ステーション2)にはキャプテン・機関員・消防士が各1名配置されています。隊員の雇用については、定年補充として年齢性別を問わず広く募集が行われており、定員1名の枠に対し80名近い応募があるなど人気も高いようです。採用試験は英語はもちろん、筆記試験・体力試験・面接などにより選抜され、レベルの高い人材が採用されます。 「Musashi(武蔵)」という愛称がつけられている。 アメリカの消防組織はPTSD対策などにも積極的に取り組んでいる。蕗井隊長による心療内科を設けて対策を行っている。蕗井隊長が作ったチラシはユーモアに溢れていてPTSD対策もバッチリ!? 写真左)岩国航空基地消防隊のデビン・ジョンストン・リー署長。署長の執務室には数々の消防グッズやポスターが飾られている。 写真中)消防次長兼日本人消防隊長である蕗井(ふきい)琢哉氏。 写真左)リー署長も応援要請による緊急援助隊として常に出動できるように荷造りしている。 写真右)ディスパッチルーム。基地内でのコール911は、一旦基地内の警察機関である憲兵隊に入電する。そこから消防隊、軍の救急隊(病院)などに同時送電される仕組みだ。 ①ファイアートレーニングタワー(消防訓練塔)建物自体は防火処理を施した3階建鉄筋コンクリート造。中に材木を入れて実際に火を放ち、実火災対応訓練を行う事ができる。こうした施設は県内にはなく、地元消防本部以外にも県内外から日本の消防組織が訓練に訪れるそうだ。3階屋上にはアメリカの定番戦術である「屋根抜き」がトレーニングできる構造となっており、屋根や天井を破壊して排煙や突入の訓練が出来るようになっている。②ロープレスキュー技術を練磨するための施設で、その周辺はガレ場が作りこまれている。また、写真奥の背面側には航空機事故を想定し、小型飛行機が用意されている。③訓練場には大型プロパンガスボンベや自動車も用意されており、さまざまな想定の訓練を実施することができる。 ①食事は副隊長、班長、隊員の順で摂っていく。この食事順や席順も役職順に上座から座る。命令系統を重んじている為、自然とこうなったそうだ。②昼食の準備風景。当番の隊員がご飯をよそう。昼食はご飯とお味噌汁を署で作り、オカズは各自が持参。晩御飯は、皆で作ったりしている。③インシデント・コマンド・システムのフローチャート。都市型捜索救助を実施する際の体勢などが細かく記されている。 小林隊員が休日に家族でイベントに出かけた際、老人が食堂で喉を詰まらせて意識不明に陥るという状況に居合わせた。小林隊員はハイムリック法で異物除去を行い、救命に成功。この功績は新聞で紹介された。 隊員らのヘルメットには、手書きで大きく「がんばろう東北」と書かれていた。このメッセージには、隊員らの深い思いがある。 2011年3月11日、東日本大震災の発生直後から、岩国航空基地消防隊では当務の隊員8名が応援要請に備えて出動準備を開始。11日午後22時の段階で出場体制を整え終えていた。津波により交通網は断絶。当時、岩国航空基地には普天間基地からC130輸送機が来ており、横田基地を経由して三沢基地まで隊員と装備を空輸し、そこから車両移動というプランで調整していた。しかし、いくら待っても応援要請はなく、時間だけが過ぎていった。「何故出動しないんですか?」「行きましょう!行かせてください!」隊長に詰め寄る若い隊員もいた。組織は違えど、同じ消防人であり、レスキュアー。救いを求める人々がいて、それに対応できる術がある。隊員達は東北での活動を強く望んでいた。それから、隊員たちはいつでも現地に入り、一週間は自己完結で活動できる装備や物資を準備し、1陣から3陣までを庁舎に待機。しかし、出動要請がかからぬまま、3月31日付けでこの体制は解除された。同じ日本にいながら、特殊な組織がゆえに出動出来ず、報道により被災地の惨状を聞くだけしか出来ない状況。──そうした悔しい思い、そうした経験からより強く感じる「かんばれ」というメッセージをヘルメットに刻み、隊員らは今日も勤務に就いている。 岩国航空基地消防隊では、日本で言うところの高度救助用資機材をはじめとする都市型捜索救助用資機材が充実しているのが特徴です。これはリー署長がアメリカ本土で現役の消防士だった頃にUSAR(アーバンサーチアンドレスキュー)隊に所属していたという経歴があるため。都市型捜索救助技術やそのための装備などの重要性や必要性を熟知する署長の発案により装備や訓練施設の充実、隊員教育の強化が行われ、現在でも常に新しい資機材を試しているそうです。 ①地中音響探知機「デルサー」 。生存者が発する声や振動をセンサーにより可聴信号と視覚信号に変換。センサー1個で5メートル四方をカバーし、反応が有ればエリアを絞り込んでいく。国内でも採用されている定番アイテム。②画像探索機「サーチカム2000」。一人で操作できるシンプル設計の画像探索機で、伸縮式の本体の先にCCDカメラやマイク、照明が備わっている。国内でも画像探索機II型として採用されているモデル。 ③瓦礫の中に生き埋めになった要救助者の捜索救助訓練が行われる。まずは「サーチ」として、地中音響探知機により要救助者の位置を探る。④広範囲にセンサーを展開し、おおよその位置を割り出す。⑤何番のセンサーから音がするか確認。センサーが拾い出した音はヘッドホンで確認でき、さらにコントロール・コンソールのメーターにより信号の強さを目視で確認することができる。⑥音反応有りの場所が確認された。⑦隊員が早速呼び掛けを行うと、応答あり。位置が絞り込めたところで、更なる情報収集を行う。⑧画像探索機を瓦礫の隙間より差し込み、要救助者がいる瓦礫内部の状況を把握する。こうして得られた情報を元に、次なるフェーズとして「レスキュー」が行われる。
①都市型捜索救助用資機材が満載されたUSAR専用車の積載庫内部。②USAR専用車積載の捜索用ハイテク資機材一式。日本で言う高度救助用資機材にあたり、電磁波探査装置や画像探索機、地中音響探知機などが用意されている。③USAR専用車に積載された都市型救助資機材一式。これとは別に、訓練用のワンセットも用意されている。④最新アイテムとして国内消防ではまだ配備例が少ないMPD(マルチパープスディバイス)も装備。これ1つで引揚げ・リリース・降下・スピード調整が可能だ。 ①ポンプ操作盤。計器類の数や配置、ホースなどの接続口サイズなど、すべてアメリカ仕様。日本で使用する車両ということで、説明は英語のみならず日本語表記もなされている。②車庫に用意されている予備ホース。上段が2.5インチ、中段が3インチ、下段4インチ。全て吸水用のホースで、接続口は2.5インチに統一してある。③アメリカの消火車両の場合、ポンプ室上部などに消火活動に用いるアタック用のホースを収納。太さは1と3/4インチ。④米軍施設は全てネジ式で統一している。しかし自衛隊施設も併設している為、アダプターを装着しマチノ式で対応できるように配慮している。 ①水難救助対応型ポンプ車の積載庫。水難救助用資機材が積載されている。②水辺という立地条件から、潜水装備を着装しての活動や、水難救助の各種想定訓練が行われる。③水難救助用資機材一式。④庁舎脇には救助用ゴムボートや、救助用サーフボードが用意されている。⑤ミリタリーカラーをまとったバギーも消防車両。メディカルバギーとして傷病者搬送に使用できるようバックボード積載部が備わる。他にも資機材搬送などに使われる。
①ブリーチングの訓練。エンジンカッターによりコンクリート塊に切れ込みを入れていく。写真左の隊員は粉塵の飛散防止のため、ホースにより注水している。②ロープにより進入し、宙吊り状態で建物壁体に進入口を設定する。こうした難易度の高い訓練も行われる。③コンクリート内部に潜む鉄筋をバッテリーソーで切断する隊員。④開口部から進入を図る隊員。内部も狭い状況だ。⑤縦吊りで要救助者を救出する。⑥夜間の瓦礫救助訓練。昼夜を問わず、こうした過酷な訓練が行われている。 写真左)ヘビーウエイトリフティングの訓練。要救助者にのしかかる重量物をマット型空気ジャッキにより少しずつ持ち上げ、枕木により安定化を図る。 写真右)Aフレームによる重量物の移動。2本の角材でAフレームを作成し、重量物側45度程度に傾くように設定し、上部結合部と重量物をロープでつなぐ。あとはAフレームを倍力システムで牽引すれば、Aフレームが直立するにつれて浮き上がり、反対側に45度程度傾いた状態で、再び地面に設置する。 写真上)ショアリングの訓練。ロープ訓練棟を倒壊家屋に見立て、木材により安定化を行う。 写真下)同様の作業を救助用支柱器具を用いて行う。 写真左)テクニカルロープレスキューの訓練。 写真右)水難救助でも活用される救助用三脚。最新式のPMI社製テラダプターポータブルアンカー・システムが導入されている。
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