消防レポート #36 京都府 京都市消防局/2003
京都市概要
京都府南部の山城盆地の北部を占め、面積610.22平方キロメートル、人口147万人の都市で、気候的には寒暑の差が大きく、冬は底冷えし、夏は蒸し暑いという盆地特有の気候です。
平安京(794年)以来の歴史的な発展を背景に育まれた西陣織や京友禅などに代表される伝統産業など数多くの産業が発達し、世界遺産にも登録されている貴重な文化財をはじめ、多くの文化財が美しい自然に溶け合って受け継がれており、国内外から年間約4千万人の観光客が訪れる国際的な文化観光都市となっています。
京都市消防局
京都は1200年にわたる悠久の歴史の中で、優れた文化や伝統を培い、古き良きものを大切に守りながらも、常に新しいものを求めて進取の気風あふれるまちとして発展してきました。
このいつの時代もこよなく愛され続けた京都の「まち」を、後世に伝えるべく災害から守るのが京都市消防局です。
京都市消防局は、昭和23年に自治体消防として発足以来、現在では消防局(本部)を中心に12の消防署(分署)と35の出張所や駐在所を配置し、約1,900人の消防職員と約250台の消防車両と2機のヘリコプターなどをもって、安全で安心なまち京都を目指し日夜活動を繰り広げています。
消防局本部
京都市風景

京都の住環境
長い歴史と自然の景観に恵まれた「世界の京都」にとって、「文化財」は切り離すことのできないものです。
全国の国宝の約20パーセント、重要文化財の約14パーセントが京都市内にあります。
「文化財防火」という言葉を見ると「文化財だから守る」「文化財だけを守る」とイメージしてしてしまいがちですが、住宅火災が発生すれば文化財が、文化財火災が発生すれば市民の安全・財産が危機にさらされ、文化財と住宅が密接な関係にあるという、国内でも例を見ない地域環境がそこにはあるのです。


  文化財の火災予防を担う 京都市消防局「文化財係」

京都の文化はいわば「木の文化」。国宝や重文、今後それらに指定されるであろう美術工芸品を含め、その大半が「木」でできています。すなわち、一度燃え出してしまったならば、いとも簡単に焼失してしまう危険性があるのです。
そんな文化財の防火対策を担うのが、京都市消防局予防部予防課「文化財係」です。文化財の防災対策などを任務としていて、署所の予防担当と協力し、市内の全文化財を災害から守るため活動しています。全国に約900ある消防本部の中でもひとつのセクションとして文化財係が設けられているのは唯一京都消防だけです。先人の貴重な遺産である文化財を私たちの代で焼失させるわけにはいきません。
京都消防は文化財を燃やすわけにはいかないのです。

  妙心寺における消防訓練
 

昭和24年1月26日に発生した奈良県・法隆寺金堂火災を契機に、毎年1月26日を「文化財防火デー」として、全国で文化財などを対象とした防火防災イベントが行われています。
京都市消防局でも平成15年1月23日〜29日までの間、「みんなで文化財を火災から守ろう」をスローガンに文化財防火運動を実施しました。その幕開けとして、京都市右京区にある妙心寺において、大規模な消防訓練が行われました。
当日は大雨と寒さにも負けず、妙心寺自衛消防隊・花園消防分団・御室消防分団・消防局消防隊の計約90名、消防車両12台と消防ヘリコプター1機が参加し、重要文化財に指定されている妙心寺仏殿から出火し、周囲へ延焼拡大していると想定した訓練が繰り広げられました。

  西本願寺における消防訓練

平成15年1月23日には世界遺産に登録されている、京都市下京区の西本願寺でも大規模な消防訓練を実施しました。
寺の職員80名と下京消防署員約50名、消防車両9台と消防ヘリコプター1機が参加したこの訓練、実に10年ぶりに大規模で行われました。国の重要文化財に指定されている阿弥陀堂の南東角から出火したとの想定で訓練がスタート。自衛消防隊の消火活動と並行し、寺の職員が本尊阿弥陀如来像などに見立てた仏像を布にくるんで搬出しました。消防部隊も救助隊による人命・文化財検索が行われ、阿弥陀堂の屋根へ向けての消防車両・屋内消火栓・放水銃による一斉放水で締めくくられました。

   平野神社・文化財市民レスキュー器材配備式

消防機関による「公助」のひとつとして、活動するための器材配備を行っています。1,000点に及ぶアイテムの中から、自分たちに必要なものを選択し行政から配備するというもので、平成15年1月24日に「平野神社文化財市民レスキュー体制(正式名称:平野神社文化財消防応援体制)」に対して活動するためのヘルメットやメガホン、布担架などの配備式が行われました。北消防署谷口署長から平野神社尾崎宮司へ器材の目録が渡されると、真新しいヘルメットを身につけ、早速自衛消防隊、近隣事業所、消防局消防隊による合同消防訓練が実施されました。

  文化財市民レスキュー体制

京都市には、多くの文化財が残されています。これは文化財の関係者とともに、文化財を守ろうとする地域住民の協力があってこそのたまものでありますが、この崇高な精神を引継ぎ発展させ、文化財を火災から守るために、京都市消防局では「文化財市民レスキュー体制」として強化していくことにしました。文化財の関係者による「自助」、地域住民による「共助」、消防機関等による「公助」のパートナーシップで、お互いが協力していくことこそが文化財市民レスキュー体制なのです。文化財市民レスキュー体制は現在までに158体制(平成15年1月末現在)が構築され、平成16年には200体制の構築を目指しています。

「文化財市民レスキュー体制」の主な活動

【災害発生時の活動】  1:火災の発見と出火場所の確認 2:召集と応召 3:119番通報 4:初期消火 5:搬出活動 6:避難誘導 7:情報伝達 8:応急救護活動
【平常時の活動】  1:普段の備え(連絡体制の確認、防災施設の取扱方法の確認、火災予防の話し合い、災害時における相互応援の検討) 2:火災の警戒(祭礼等の警戒、敷地内の巡回)

  消防指令センターと消防・防災ネットワーク

車載端末装置

すべての消防車や救急車に積載された端末装置。道路や対象物の地図情報をはじめ、消火栓や防火水槽などの水利情報、道路工事に伴う交通障害や、救急病院の情報などをリアルタイムに伝送し、現場活動を支援します。

消防局庁舎の3階にある指令センターです。最新のコンピュータと通信技術を駆使した消防指令システムを導入し、迅速・確実な出動体制を確保するとともに、災害に対する消防対応力を高め、被害の軽減と救命効果の向上を図っています。向かいの部屋には、阪神・淡路大震災の教訓をもとに、最新のデジタル通信技術と情報処理技術を導入した「防災情報センター」があります。 消防指令システムと防災情報システムを統合し、総合的な消防・防災情報ネットワークを構築しています。


京都市の消防車両
【左上】 震災対応型司令車/阪神・淡路大震災の教訓をもとに、震災時に予想される悪路の走破を主眼とし、高機動性の車両「トヨタ・メガクルーザー」をベースとした司令車が配備されました。

【左下】 大型救助工作車(V型救助工作車)/地震災害をはじめとする大規模災害発生時において、迅速・確実な救助活動を実施するために、クレーンや建物倒壊現場等で活用する救助用資器材を搭載しています。

【右上】 大量送水工作車/地震災害などで水道網が寸断された場合、長距離にわたり大量の水を送るための車両です。

【右下】 大型高規格救急車/大地震・列車事故・食中毒等で、多数の傷病者が発生した場合に、一度に多くの傷病者を搬送することが可能な大型高規格救急車です。「トライハート」の車長延長版という一台です。

Reported in 2003.
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