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愛知県消防学校


質の高い消防士の育成を目指す愛知県消防学校

愛知県には46の消防本部があり、そのうち名古屋市消防局は独自消防学校を有しています。尾張旭市にある「愛知県消防学校」は、それ以外の45消防本部の教育機関として、各市町村の消防職員、消防団員及び自衛防災組織員などに対し、消防の責務を正しく認識させると共に、消防防災に関する専門的な知識及び技能を付与し、あわせて職務遂行に必要な体力及び態度を養成することを目的に組織されています。
近年の消防を取り巻く環境は、都市化、高齢化、高度情報化などの社会経済情勢の変化や住民の生活様式の多様化に伴い、火災をはじめとする各種災害の態様も複雑多様化、大規模化の傾向にあります。また、大きな被害をもたらす自然災害の発生も顕著であり、県内(58市町村)の大部分が東海地震の地震強化指定地域に指定されたこともあり、地域住民の防災と安全に対する関心と期待は、一層高まっている現状があります。このような時代の変化を踏まえ、消防学校では、これらの時代のニーズを的確にとらえ、今後の消防行政の進むべき方向を見定めることのできる質の高い消防士の育成を目指し、次の5点を基本としています。

1.

消防の理念と責任を正しく認識させる。

2.

消防活動に必要な規律、節度を育成する。
3.
社会情勢の進展に即応できる、消防に関する知識の修得と技術の向上を図る。
4.
旺盛な体力と気力の錬成を図り、敏活な行動力を育成する。
5.
寮生活を通じて公正明朗な品位と、良識を備えた人格の形成と共同精神のかん養、および、集団行動の重要性を体得させる。
広い敷地に様々な訓練施設が充実

70,687.19平方メートルという広大な敷地は、消防学校では日本一となっています。組織的には愛知県県民生活部防災局に属し、校長以下26名の職員で運営されています。職員は総務グループと教務グループとに分かれており、2年任期の8名が消防本部から派遣された、警防・救急・救助・予防のスペシャリストである教官と、他は県職員や消防OBなどの嘱託職員で構成されています。敷地内には教室や職員事務所が入った管理教育棟、初任科生が生活する宿泊棟の他、防災教育センター、水難救助訓練場があり、広い屋外訓練場には4階建2棟からなるレンジャー訓練塔があります。また、訓練用消防車の車庫上は屋内訓練場になっており、荒天時でも訓練が行えるようになっています。


 まだやれる....。限界を見極めながら、ギリギリまで続けられる訓練

授業はおおむね50分。午前9時10分~午後12時までは座学を中心とした授業が行われ、午後1時10分~午後5時までは実科訓練として屋外での訓練が行われます。座学は法律の勉強など、慣れないものばかりであるのはもちろん、各種訓練もハードなのはいうまでもありません。「人間、自分の限界の50%でギブアップしてしまいます。それを最低でも70%までやらせるようにしています」とは教官のコメント。消防士にとって甘え癖は禁物なのです。そんな癖をつけさせないためにも、限界のギリギリまで訓練は続けられます。そこまで訓練を行えるのも、プロの教官がいるからこそ。教官は初任科生の「限界」を見極め、「まだやれるな」というのが判るといいます。このようにして、危険な現場から生還するための技術・体力・精神力が養われていくのです。初任科生はとにかく熱心に、様々な知識や技術を吸収しようとしています。一日のカリキュラム終了後も、自ら訓練に励んでいます。教官も初任科生には特別な思い入れがあるので、快くそれに付き合い、時間の限り体を動かします。初任科生たちに、訓練生活について話を聞くと、「最初の2ヶ月ぐらいは地獄でしたが、その後は厳しい訓練に体も慣れ、楽しいです」とのこと。そして最後には笑顔で「敵は己と喉の渇きです」と笑いました。卒業間近の74期生。彼らにもすでに消防人としての空気が漂っていました。

消防吏員となったならば、必ず入校する「消防学校」。政令指定都市などでは独自の消防学校を有していますが、その他の自治体消防は、県の消防学校にて初任教育を受けます。愛知県の場合は、県内46消防本部中、名古屋市消防局以外の45消防本部が、尾張旭市にある「愛知県消防学校」を利用し、初任教育以外にも様々なカリキュラムが行われています。

初任科の科目内容
  科目 時間  
1
倫理
10 消防職員としての自覚と、その責任を誠実に遂行する態度について理解させる。
2 情操 11 消防職員として要求される幅広い知識と豊かな感性を養う。
3 法制通論 30 法学の基礎知識及び近代法の理念と体系について理解させる。
4 消防法 12 消防法の概要と関連法について理解させる。
5 消防制度 14 地方自治の沿革及び現行自治制度の基本的な理念と構成並びに消防制度の推移と現行の消防組織制度について理解させる。
6 服務 12 地方公務員の根本基準及び消防職員として、必要な職責、規律、責任等を理解させる。
7 理化学 28 燃焼理論及び形態について、消防上必要な基礎知識を理解させる。
8 勤務 17 消防職員の勤務要領及び公正書の作成と正しい取扱いについて理解させる。
9 予防 20 火災予防の概念及び広報等予防全般について理解させる。
10 危険物 12 消防危険物及び危険物規制等について理解させる。
11 消防用設備 12 消防用設備等の構造、基準及び設置等について理解させる。
12 査察 20 査察の基本的要領及び着眼点について理解させる。
13 建築 15 建築の構造、耐火性等消防上必要な知識を養う。
14 安全管理 12 安全管理の概念及び対策等について理解させる。
15 特殊災害
と保安
12 放射性物質、ガス、毒劇物、火薬等に関する基礎知識及びこれらの保安について理解させる。
16 火災防ぎょ 28 各種火災の形態及び基本的防ぎょ行動について理解させる。
17 火災調査 15 出火点の判定及び出火原因の調査方法等の知識を養う。
18 防災 31 自然災害等について、消防上必要な知識と防災対策について理解させる。
19 救急 20 救急について、基礎的な事項を習得させる。
20 消防機械器具 18 各種機械器具の構造、取扱い準備要領等について理解させ、無線機器、道路交通法の知識を習得させる。
21 消防ポンプ 18 消防ポンプの構造、機能及び放水理論について理解させる。
22 訓練礼式 60 消防職員に必要な訓練、礼式及び点検について習熟させる。
23 ポンプ操法 70 消防ポンプの操作、取扱い及び応用訓練について理解させる。
24 救助訓練 50 ロープの結索要領及び救助活動に必要な技術を習熟させる。
25 機器取扱訓練 38 各種消防機械器具の取扱について習熟させる。
26 応用訓練 70 宿各種の災害を想定し、これに対処する実践的技能を習熟させる。

27

体育 70 消防活動に必要な体力を養う。
28 実務研修 21 職場体験研修等を行う。
29 選択研修 70 関連施設等において実地研修、地域災害教育及び無線従事者講習、玉掛技能i講習等を行う。
30 効果測定 26 学科試験及び実技試験を行う。
31 行事・その他 58 入校式等を行う。
  900  
沿革
昭和15年  1月 愛知県警察演習所内で、消防教養訓練が開始された。
昭和19年 4月 名古屋市東区久屋町の1の1に消防の訓練きかんとして、愛知県消防練習所が設置された。
昭和23年 3月 消防組織法の施行に伴い、名称が愛知県消防訓練所と改称された。
昭和30年 5月 消防訓練所の建物が、都市計画により撤去されることとなり、名古屋市中区南外堀町6の1、市町村会館内に移設された。
昭和39年 4月 市町村会館では、敷地、施設が狭隘のため、入校生の増加に対応できなくなり、東春日井郡朝日町(現在の尾張旭市)地内の現在地に新校舎が建設された。
昭和48年 3月 入校社の急増対策と教育内容の強化を図るため、新規拡張整備計画が決定された。
昭和51年 4月 防災教育センター竣工
昭和52年 9月 管理教育棟竣工
昭和53年 12月 宿舎棟竣工
昭和55年 12月 屋内訓練場及び水難救助訓練場竣工
昭和57年 3月 旧校舎が撤去され、訓練広場が拡張された。
昭和61年 3月 レンジャー訓練塔竣工
平成 3年 10月 訓練広場一部舗装整備竣工
平成 4年 3月 防災教育センター「煙道体験コーナー」等一部改修整備
平成10年 3月 防災教育センター「人にやさしい街づくり整備」一部改修
平成12年 9月 宿泊棟(女子寮室)一部改修

 前期・後期合わせて143名。初任科は消防士の登竜門

昭和39年10月1日の開校以来、毎年50~170名程の消防士を現場に送り出しています。その、新たに採用された消防職員に必要とされる基礎的な知識、技術及び体力の錬成と職場における業務に即応する能力を習得させるための科目が「初任科」です。平成14年は、前期(4月4日~9月19日)で71名、後期(9月25日~3月19日)で72名の初任科生が、ここ愛知県消防学校の門をくぐります。前期は拝命の後、すぐに消防学校での初任科教育を受ける事になりますが、県消防学校では受け入れ人員の関係から前期・後期に分けているため、後期入校予定の者は、拝命後半年間、実際の消防署で勤務しています。訓練の行われる6ヶ月間、週末の外出日と毎週水曜夕食後の生活用品買出し以外、寮で生活する初任科生たち。彼らは班ごとの生活を行い、1班6名で6人部屋での共同生活を送ります。初任科には各消防本部から派遣された教官2名と、座学系の授業を担当する県職員1名が専属となります。このうち、いわば「担任の先生」ともいえるのが教官であり、初任科生の「兄貴的」な存在でもあります。

 74期生、卒業へ向け奮闘中!!

取材を行った時には、74期生も全カリキュラムを終え、卒業査閲へ向けての訓練に励んでいました。これは所属本部の消防長や父母を招いて行われる、これまでの成果のお披露目で、様々な隊形に整列してゆく「部隊訓練」や、三連はしご訓練・ロープ渡過・基本結索・ポンプ操法からなる「消防訓練」などが披露されます。取材日はこの部隊訓練に続き、消防訓練の予行が行われました。「爆発的な声を出せ!!」「よし!!」屋外訓練場に、教官と初任科生の声が響き渡ります。

少年消防クラブ指導科

少年消防クラブは、少年の頃から防火・防災及び救急に関する知識や技術の勉強をしながら、防火・防災に強い人づくりと地域における連帯感の重要性と明朗闊達な気風を養い、少年の情操教育に寄与しています。愛知県消防学校では「少年消防クラブ指導科」として、子供たちの夏休み期間中に1日研修を行っています。「心肺蘇生法」「地震災害のVTR上映」「防災クイズ」「放水体験」「消防車乗車」「救助技術体験」「訓練礼式」の7項目を30分ずつ行い、初任科生は「教官」の役を務めます。これは人と接する事と、指導を行うことで初任科生にもその内容について再認識させることを目的としています。

30kmを歩きぬく耐暑競歩

協調性・チームワーク・精神力を養うことを目的に午前8時から午後4時半まで、全工程30kmを歩きぬく「耐暑競歩」という訓練があります。74期生は、名古屋の最高気温が38度を記録した8月6日に実施されました。辛いながらも、学生には案外好評だったそうです。

寝起きを襲う非常呼集

夜間は舎監である消防OBの職員1名と急病などに対応するため教官が1名泊り込んでいます。消防学校といえば、寝起きを襲う「非常呼集」があります、教官の話しでは「安全管理面から見て、最近ではあまりやりませんよ」という事でした。そこで初任科生に聞いてみると、「回数はわかりませんが、結構やられましたよ」と笑う。 午後10時30分~翌朝6時30分までが就寝時間なのですが、起床少し前に行われることが多いそうです。指定装備も様々で、「消防六法を持って集合!」なんてことも・・・。

 530運動で地域へ奉仕

昭和40年代、経済の高成長と共に、街ではゴミの散乱が目に付く様になり、昭和50年5月18日、豊橋自然歩道推進協議会が中心になって、「自分のゴミは自分で持ち帰りましょう」の合い言葉のもと「530運動」の推進を豊橋市に提唱し、市は官民一体となり、市内各種団体、学校、企業、個人に働きかけ、7月16日に530運動推進連絡会が設立されました。この運動の基本はゴミを拾うことよりも「自分のゴミは自分で持ち帰りましょう」という合い言葉に示されているように、ゴミを捨てない心を養うためにゴミを拾うという啓蒙活動であり精神運動であります。この530運動は豊橋市をはじめ、県内はもとより近県並びに全国各地に拡大しています。愛知県消防学校でも、地域への奉仕活動の一環としてこの530運動を実施し、体力錬成を兼ね、3時間かけて学校周辺の道路のゴミを拾います。


■ 愛知県消防学校が保有する消防車両 ■


Reported in 2002.