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山口県消防学校 第26回ファイアペンタスロン大会

山口県下の消防本部に所属する職員の誰もが「アレは辛かった」と口にする、伝統の初任教育プログラムがある。それが「ファイアペンタスロン大会」という消防5種競技だ。

全国の消防学校でも例を見ない競技であり、他校でいうところの「総合査閲」に相当する卒業前の一大イベントとして「消防鉄人レース」の異名を得て注目されている。

平成19年9月20日に山口県消防学校にて、晴れ渡った青空の下に消防鉄人レースが行われた。
参加者は同学校の第53期消防職員初任教育学生57名。4月の入校以来、消防業務を遂行するために必要不可欠な技術、体力、気力を養成するため日々訓練してきた初任教育学生が、その成果を披露し、また、最悪の状況下にあっても的確な判断のもとに活動しうる資質の向上を図ることを目的として、「初任教育の締めくくり」として毎年行われている。

競技内容は実に過酷。水上訓練・ロープ訓練・火災防ぎょ訓練・救助訓練・障害物競技の5種目の訓練や競技を“連続して”行うのだ。過酷さを物語るように、大会開始直前には医師による体調検査が行われ、コンディションが悪いと判断されたものはドクターストップにより参加できない。

準備体操として体力向上体操を行う。

準備体操の「体力向上体操」を終えると、いよいよ競技開始だ。
学生は午前と午後の部に別れ、それぞれが選手と進行役を勤める。5分おきにスタートし、さまざまな種目に挑む。


活動服に編み上げ靴、保安帽を身につけた学生が立つスタート地点は、プールの飛び込み台の上。最初の種目である「水上訓練」は、なんと「着衣泳」なのである。スタートの合図と同時にプールへ飛び込み、25メートル往復、計50メートルを泳ぐ。

プールサイドに上がると服装を整え、その上から小綱でコイル巻きもやい結びを作成する。

3mの高さから飛び込んでの着衣泳。スタートからしてハードだ。
顔は常に水面から上に上げておくのが肝心。
全身から水が滴り落ちる中、コイル巻きもやいで命綱を設定する。
結索が済むと教官のチェックが入る。

水を滴らせながら渡過する学生たち。
渡りきったら、今度は座席懸垂で地上へ舞い降りる。

休むことなくそのまま訓練塔3階まで駆け上がると、ブリッジ線をセーラー渡りで渡過する。中間で一度フォールし復帰しなければならないのだが、濡れた活動服が体の動きを妨げ、なかなかいうことを聞かない。

この間、一人ひとりが事前に綴ったコメントが読まれる。本部名と氏名、そして「交通事故で他界した友人がいる。一人でも多くの人を救いたいと想い、救命士を目指した」「小さいころからの憧れ。最初、両親には反対されたが、いまでは応援してくれている」といった個々の想いや抱負が読み上げられる。これは数年前に学生自身が提案したアイデア。以降代々受け継がれている感動ポイントの一つだ。

中間地点で一旦フォールし、復帰を図る。
必死にロープに食らいつく学生に
教官が檄を飛ばす。

渡りきったらそのまま座席懸垂で地上に至り、火災防ぎょ訓練に突入だ。防火衣を着装し、筒先とホースを手に訓練塔6階まで駆け上がり、鐘を鳴らす。その後再び地上へ下り、手にしたホースを延長して放水を行い、的を倒す。

筒先とホースを担ぎ、6階建ての訓練塔を駆け上がる。
再び地上に戻り、ホースを延長。 標的を順番どおりに倒したら消火成功となる。 使用したホースを巻き取るところまでしっかりと行う。

ホースを収納したら、防火衣を脱いで空気呼吸器を着装し救助訓練が始まる。煙が充満した室内から要救助者(ダミー)を救出し、呼びかけを行いながら迅速に約20m離れた救護所へ搬送する。

入口前で面体を着装したら
進入開始だ。
防火衣を脱ぎ、
今度は空気呼吸器を着装。
発見と同時に合図を送り、
救出開始。
声かけを行いながら、
仮救護所まで
要救助者を搬送して
クリアとなる。

元の位置に戻って空気呼吸器を離脱し、給水ポイントをはさんで行われるのが最後の難関である障害物競技だ。

サーキット訓練施設を使って幅跳び(1.5m)・懸垂(5回)・タイヤ障害・平均棒・丸太渡り・高塀・腹筋(30回)・ジグザグ走・懸垂渡り(うんてい)の9施設をクリアしたら、持久走に突入だ。

汗にプールの水、そして泥まみれになった身体にムチをうち、ラストスパートをかけて持久走に望む。

グラウンド2周を走るだけなのだが、ヘトヘトの状態ではしんどさも半端ではない。観客席の前を通過する際は、見学に来た学生の家族から大きな応援の声が飛びかう。また、進行役を勤める学生たちも声援を送り、その声に背中を押してもらい、ゴールに飛び込む。

観客席前では見学に訪れた学生の家族や来賓の関係者から大きな声援が贈られる。半年間のトレーニングに加え若さがある学生たちも、全種目を終えるとヘトヘトの状態だ。

初任教育の締めくくりとして行われた第26回ファイアペンタスロン大会。

57名の学生たち全員が無事完走し、タイムは早い者で約18分、平均でも25分前後という好成績を残した。そもそも、技術、体力、気力の3拍子がそろわなければ、ゴールなどできるはずもない。この競技を完走できたからこそ、初任教育最大の成果といえるいだろう。加えて、大会を目にし、皆の声が大きな原動力になっているということを痛感した。

研修中、常に教官が口にするのが「声を出せ」という言葉。これは確認呼称はもちろん、要救助者や仲間を励ます声でもある。教官が「○○、がんばれよっ!」と声をかけると「トップ獲ります!!」といった掛け合い、また、ペンタスロンは競技大会であり、いわば勝負事にもかかわらず、学生たちも互いに「がんばれよ!」「いけるぞ!」など声援を掛け合う。まさに全員が支えあっているのだ。

本部という垣根を越え苦楽をともにしてきた仲間たち、そして深い信頼関係を築きあげた教官。互いに声を掛け合う姿は、半年間という時間によりつくりだされた消防人たちの熱い「絆」を見ているようだった。

第1位の岩国地区消防組合消防本部の松本一輝さん
総合タイム17分52秒とダントツのスピードでゴールした。

Reported in 2007.