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 レポート#91 フランス パリ市消防局

「いつの世も命は人のためにあり」というパリ市消防局の考え方には古い歴史文化をもつ、パリを永遠に愛する気持ちがこもっている。実際にパリに滞在すると、パリに生まれ育っていなくても、愛される理由がわかる。まず、パリ市内を歩いていると街中のすべてがアートしているので楽しい。彼らのアートに対する観念は「生きた証(あかし)をさまざまな表現方法を用いて、未来へのメッセージとして真剣に残すこと」ではないかと感じた。もちろん、メッセージを残す文化は今に始まったことではない。レオナルド・ダ・ヴィンチがモナリザの絵に秘密を隠したように、まるで暗号のごとく、謎解きを楽しめる仕掛けを施し、メッセージを英知の鎖(くさり)として未来に伝えている。

次に、とにかく人々が礼儀正しい。たとえば、東京の渋谷駅の人混みを歩いていて、目があった人に挨拶をするなんて、まずあり得ないが、パリでは、どんなに人が多くても目が合うと「ボンジュール」と挨拶してくれる。また、よく「フランス人は英語を話そうとしない」というが、今回の滞在で、英語を話さなかった人はいないほど、ほとんどの人が英語で親切に対応してくれた。

どこに行っても、とても上品で、知的なエレガントさを感じるパリ。パリの消防士達は、古代の騎士のように女性達を愛し、そして歴史文化をしっかりと守っている。百年後もきっと変わらないと思う。


お洒落な夜間灯とてもお洒落な消防署の夜間灯がパリの安全をやさしく見守っている。代々受け継がれてきた消防士達の熱い気持ちが感じられる。
Text & Photos by Sunny Kamiya/文・写真=サニー・カミヤ 

パリ市消防局のマークはエッフェル塔とギャレット社のヘルメット、水と炎をイメージしてデザインされている。

パリ市消防局の各消防署は、ほとんどが築100年以上、どの建築デザインの外観も内部も100年前に建てられたとは思えないほど。
1800年代、消防署がお金持ちのスポンサーによって組織運営された歴史がある。当時のスポンサーの家紋が消防署のロゴとして使われているところが多い。
署内にあるカウンターバー。ビールは勤務中に小瓶2本まで飲んでもいいが、1本2ユーロ(約300円)と高いので、あまり飲む隊員はいない。彼らにとってビールはジュースと同じ感覚。一番飲んでいるのはストレスが多い署長と幹部職員だそうだ。
勤務スケジュール、局長からのメッセージ、イベント日程などを知らせる消防行事掲示板。アメリカの消防署ではよくあるジョークやイタズラ書きはなかった。
どこの消防署も、昼食後は、最低1時間はトレーニングを行っている。
署によっては、出勤してすぐに登り綱、鉄棒、マット、ジョギングのセット運動を行う。どの隊員もスポーツ刈りでスタイルがよく、覇気があってマナーがよい。
横長の建物は軍事博物館。後方中央の金色に光るドーム状の建物は、栄光を誇り建てられたナポレオンの墓。
幼稚園児とその家族への火災予防訓練。大人達には、子供の守り方を教え、子供達には消防士への憧れを持たせることで、火遊びをしないことを意識づけている。
パリ市消防局が採用している世界的にも有名なデザインと機能性をもつギャレット社のヘルメットも子供達に大人気だ。
ヘルメット、防火衣、呼吸器用マスクは個人貸与

署内にある消火栓を使って、ホースの着脱訓練、放水訓練をしている新入隊員。消火栓の横を通るたびにホースの着脱を練習するそうだ。

1889年(明治22年)5月6日に公式オープンになったエッフェル塔。設計者は、ギュスターヴ・エッフェル氏。当時、フランスは産業革命の高揚期にあり、最新技術のシンボルとして建てられた鉄の記念碑。約300m上の展望台には水圧ポンプで作動するエレベーターで行ける。高さ123mの2階部分にはすばらしい眺望と味を楽しめる高級レストラン「ジュール・ヴェルヌ」がある。
火災予防週間中、市民とのコミュニケーション訓練と熱傷センターへの寄付金を募るために、食材市場の入り口で若手隊員がクジを2ユーロ、約300円ほどで売っていた。クジに当たるとTシャツやキャップなど、消防グッズがもらえる。

手前の消防車にはファーストエイド用の機材とストレッチャーが車載されている。ただし、負傷者の搬送はできないそうだ。理由は、呼吸器など、警防器具も載せているため十分な消毒が行われていないことによる感染防止のため。
ドレーゲルの空気呼吸器の使い方を詳しく説明してくれた。署内には、空気呼吸器だけを専門に修理する消防士が日勤で働いていた。

要救助者用のマスクと、エアの無くなった隊員用の予備マスクとの組み合わせ。
トム・クルーズ似のマルコ隊員は現在26歳で、消防隊員としてコソボ戦争に行った経験がある。戦地での消防活動は、現地の建物に慣れていないために二次災害が多く、気を抜く暇がまったくなかったそうだ。

セクール消防署のジョバンニ隊長(中央)と隊員達。パリ市消防局の消防士の平均年齢は28歳と若い。42歳になると退職したり、事務職となって、余暇を楽しむために人生の大切な時間を過ごすそうだ。

病院と契約している民間救急車。軽症と重症で車を乗り分け、隊員の人数や資格も違う。搬送料金は初乗りで8,000円程度。処置内容と距離によって料金が変わる。

パリの市街地は狭いため、小型梯子車が活躍している。


資機材の説明をしてくれた22歳のコレット隊員。消防学校を卒業したばかりだが、とても機材に詳しかった。パリの消防学校では、戦地で闘うための武器の使い方、爆弾処理、武術も習うそうだ。
自分の顔がデカいのか、フランス人の顔が小さいのか、ヘルメットにアゴが納まらず、ショックだった。

全世界の消防事情を視察研究して約10年。多目的に消防関係のみなさまにお役に立てるまでになりました。現在は、海外消防派遣研修のコーディネーターとしても活躍中! とくにアメリカの消防事情を研修されたい方は、お気軽にご連絡下さい。

最後に、パリは本当に魅力的な街だと思う。お洒落でセンスのよいレストランやブティックが沢山あり、通りを歩くのが楽しい。買い物に飽きたら歴史の名所を訪ね、それぞれの時代に生きた人々が残した芸術の表現から、当時の政治背景や宗教の力関係を感じたりできる。そして、歩き疲れたら、チーズ、オリーブのピクルス、美味しいワインを飲みながら、回想に耽ったり、とにかく、すべてが興味深くて面白い。

Reported in 2006.