近年、全国の消防組織は各地で発生する大規模で対処困難な災害に対応しなければならない状況が多発しています。新潟県中越地震では土砂崩れの現場からの昼夜を徹した男児救出劇が行われ、JR福知山線の脱線事故でも過酷な状況での救出活動が繰り広げられました。こうした活動を目の当たりにしたとき、私たち消防人は仲間の功績を賞賛する前に、ある不安感に襲われます。 「もし自分が所属する地域で同じようなことが起きた際に、対応できるのだろうか…?」 これら大災害を教訓に、特別高度救助隊の発足や、高度資機材や特殊装備の配備が行われてきました。しかし、基本となるマンパワーが拡充されるわけでなく、大多数の中小規模消防本部にとっては「応援により対応力を補完してもらうための仕組み」でしかありません。自らで対応するための、地域の特性を考慮した組織編制や部隊運用が必要不可欠。 こうした考えから、私はまず自分にできることを考え、数年前から各地の災害対応技術の情報を収集するとともに、新しい救助方法や救助資機材の取り扱いなどの講習会に、自主的に参加してきました。すると、資料や講習会の中で、随所にアメリカの消防機関やNFPA(全米防火協会)という言葉が目に付きました。アメリカでは高度救助技術の研究開発とマニュアル化が進んでおり、トレーニングが行なわれているということがわかりました。
そして、アメリカ合衆国のFEMA(連邦危機管理庁)の組織下に位置するUSAR(都市型捜索救助隊)チームでは、外部からの研修も受け付けているということを知り、私も2006年と2008年の2度にわたり受講することができました。救助技術において世界をリードするアメリカは、全てにおいてシステマチックであり、ベースは合理的な活動方針ということが感じられ、まだ知らないことが多くあり、新たな発見も多くありました。 今回は、その際に学んだ内容の一部をお伝えしたいと思います。複雑多様化する各種災害から市民を守る救助体制の構築、組織強化の一助になればうれしい限りです。 |
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写真左)オクラホマシティー連邦ビル爆破テロの現場にて活動中のCA-TF3隊員。 写真右)2004年に行われた中国赤十字救助チームの研修の様子。国内外のさまざまな機関の研修を受け入れている。 |
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災害現場での活動状況。 |
レスキューシステムとは、都市型災害を対象とした救助方法の総称。重機の使用が困難な発災初期の段階においては、人力による救助方法が極めて重要となるります。この際に用いる人力的救助方法(消防機関が持っているような資器材をほとんど使用しない)を主な目的として構築されたプログラムが「レスキューシステム1」。
消防が保有する救助資機材や建設業界で使用されている工具等を駆使して、倒壊建物や落石等の重量物の中に埋まった要救助者を救出することを目的としたものを「レスキューシステム2」と呼んでいます。レスキューシステムはこの2つがあり、トレーニングでは講義+実技の内容を5日間かけて習得します。
今回受講するのはレスキューシステム2。それに先立ち、復習としてレスキューシステム1の講義を要約したものがレクチャーされます。その後、引き続き、レスキューシステム2で必要となる建物構造などの知識を学んでいきました。
レスキューシステム1の復習ではUSARチームの体制や、出動基準などの運用面、指揮系統を学ぶと共に、レスキューシステム1がどのようにして生まれたかなど、基本的内容を学習します。レスキューシステム1は、大変シンプルな救助方法をマニュアル化したもの。実はそのシンプルさが重要であり、災害現場ではこのシンプルな救助方法を根幹とした活動を行っていきます。
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災害現場で混乱が生じるのは、様々な機関の様々な部隊画活動を共にするため、指揮系統がばらばらとなり、情報が迷走し、最前線の隊員の迷いが生じ、更にそれが指揮現場への混乱と繋がるという悪循環が生じるためといわれています。また災害規模に比例して、混乱は大きくなります。 このような混乱をなくすために、ICSという概念を用い、指揮者が現場を常に把握し、災害現場で隊員が活動しやすいことを念頭に置いた指揮命令系統が確立されているのです。このICSを学び、更に情報収集・運用資金・搬送・調整・災害対応部隊を細かく分け、色分け等を行いながら、円滑に活動できるように、組織全体で認識していかなければならないということや、このICSは、大規模な災害のみに対応するものではなく、規模に合わせ、組織を縮小拡大させていけば、どのような災害にも対応できるという説明がなされました。 |
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今回新たに追加講義として取り入れられた内容で、災害現場における各種建築物の構造や救助活動による建築物へのダメージ、外観からの危険度判定など、建築物の危険性の判断をする基準を学びます。震災や火災などで建物が崩壊するのには原因があります。建築物の構造をしっかりと理解したうえで、事前に対策を立てておくことにより、倒壊による危険性を非常に低くすることができます。 今まで消防にはあまり馴染みが無かった概念ですが、近年になってショアリング技術とともに注目されています。崩壊の危険性がある建物内に進入する際に、危険評価を行った上であらかじめ支柱などを設置することで、要救助者の救出はもとより、進入する救助隊員の安全確保も可能となります。 |
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Reported in 2011
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