遅れた日本の救急現場の現状を雑誌に投稿した武井氏。予想以上の反響の一方で、東京消防庁は騒然となっていた。掲載されてからほどなく、武井氏に一本の電話が入った。相手は東京消防庁のトップ、中條永吉総監。覚悟を決めて総監室に入った武井氏に、中條総監はこう言った。
「武井君は勇気があるな」
あっけに取られる武井氏。中條総監の妻がたまたま武井氏の記事を読み、「あなたの部下には度胸がある人がいますね」と言われたのだという。
主婦をターゲットにした武井氏の作戦が、思わぬ形で実を結んだ。中條総監は、続けて言った。
「救急を変えなければならないね─」
中條総監自身も司令補時代に四谷消防署で救急隊長を勤めていた。目の前の命を救えない辛さを身をもって知っていたのだ。
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