2020.10.28

消防ヘルメットFIRE HELMET COLLECTION,消防ヘルメットコレクション

命の絆No.66 オーストラリア ヴィクトリア州 カントリー・ファイアー・オーソリティー

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命の絆 消防ヘルメット

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THE BOND OF BROTHERHOOD
助けを求める声があるならば、いかに過酷な災害現場であっても身を投じていく消防士たち。

時代や国境を超え、すべての消防人の心にある博愛の精神が、彼らを突き動かす。隊という名の“家族”が、危険な現場で協力し合い“人命救助”という任務を成し遂げる。

「消防ヘルメット」はそんな彼らの活動を支え、危険から身を守る盾となってくれる。現場には要救助者、仲間、そして己の命をつなぐ博愛の絆があり、その象徴が消防ヘルメットといえるであろう。

 
No.66 オーストラリア ヴィクトリア州 カントリー・ファイアー・オーソリティー
MSA社 ポリカーボネート製 トップガードT型ヘルメット

 
メルボルンを州都とするヴィクトリア州はオーストラリア大陸南東部に位置し、南西は広大なグレートオーストラリア湾、南東はタスマン海に面する。この2つの海洋は毎年春(11月)から夏(2月)にかけて、西に高気圧、南に低気圧を同時に発生させる。風は海から大陸内部の砂漠へ向かい、乾燥した大地に水分を奪われ、逆に熱を吸収して背嶺山脈のブルーマウンテンを越え、ヴィクトリア州へ熱波を送り込むと同時に、低気圧とのせめぎ合いで雷雲を発生させ、落雷も頻繁となる。また近年の気候変動によるインド洋の海水温変化(ダイポール)の影響も加わり、大陸に東向きの強い風を吹かせる。

その結果、ブッシュと総称される低木や高木、山林に落雷しての火災、強風による電力線と木の枝との接触によるショート出火など、自然がもたらす火災は人々を悩ませ続けてきた。コアラの好むユーカリは火災による熱で種子が発芽するメカニズムを持つなど、植生も呼応するようになっているほどである。そしていったん出火すれば、乾燥と強風のなか、走炎のスピードは低木帯で時速20キロメートル、1日に1万ヘクタールを焼き、樹林帯での火力エネルギーは毎分5万キロワット~10万キロワットにおよぶという。

こうした「ブッシュファイアー」※と呼ばれる火災に巻き込まれて死亡する人も多い実情に対処するため、1945年9月20日にはメルボルン市以外の広い州域で消火・救助・危険物処理を行うための組織が設立された。それがカントリー・ファイアー・オーソリティー(Country Fire Authority)である。超大規模で同時多発するブッシュファイアーに対し、組織体制は常勤550名のファイアー・ファイターに支援要員が1,100名。さらに各地で消火や支援に携わるボランティアが総勢59,000名登録済であるという。消防ポンプ車はその多くが水槽付で、容量1,200リットル~4,150リットルの各種タンカー250両に加え、はしご車、救助車の30両とスタッフ・カーの4,000両が常時待機。ほかに輸送機改造の大型散水ジェット機、小型偵察機、消火専用大型ヘリコプターも所有している。

紹介するヘルメットは第6ディビジョンのバーモン~カランダニラ地域内のビーアック地区を管轄していた第60バタリオンのT・ローズウェル・バタリオンチーフが使用していたもの。アメリカ合衆国原産で、当時はオーストラリアでも生産していたANSI-Z89.1-1969,ClassTの証明を付したMSA社トップガードT型だ。「MSA」とはMINESAFETY APPLIANCES COM.の略で、本来は鉱山保安用帽のメーカーである。真白な帽体に鮮やかなブルーの太いラインと両脇の縦3本のラインはバタリオンチーフであることを標示。帽体正面は「CFA」(Country Fire Authority)の文字を盾状のなかに配し、帽体内ライナーはハンモックと皮革製あご紐のみで軽やかにまとめている。1970年~1985年まで使われたこのヘルメットは、1993年5月15日にレオナルド・ザーゲント氏から贈られた。

※大きな被害を出した過去の主なブッシュファイアー

  • 1983年2月16日
    「灰まみれの水曜日」と呼ばれた火災で、州内120カ所で発生。21万ヘクタール、2,000戸の建物を焼失し、47名が死亡した。
  • 1998年12月2日
    「リントン・ブッシュ・ファイアー」と呼ばれた火災で、660ヘクタールを焼失。消火活動中のギーロングウエスト・ブリゲードの2両の水槽車が火に囲まれて、ボランティア・ファイアー・ファイター5名が殉職。
  • 2009年2月7日
    「ブラックサタデー」と呼ばれた火災。13の地域で発生し、合計45万ヘクタール、3,500戸以上が焼失し、173名が死亡した。焼け燋げた樹林の根元で弱り切っていたコアラが、ファイアー・ファイターの与えたペットボトルの水を両手で抱えて飲んでいる写真が世界中へ配信されたことでもよく知られる。
  • 2019年秋~2020年2月7日
    イーストモップスランド、ほか9地域で合計150万ヘクタール、396戸が焼失し、死者も5名出た。
PROLOGUE 災害現場で活動する隊員たちの姿で、ひときわ目を引く存在が「ヘルメット」である。
特徴的なデザインにはさまざまな機能が秘められており、頭部保護という同じ目的を持ちながら国によっていろいろなパターンを見ることができる。
そもそもヘルメットは軍事用として誕生し、古くから頭部に直接加えられる打撃力を減少し、直接的な負傷を防ぐことに重きがおかれてきた。後に用途ごとに進化を続け、使用される環境によって求められる性能やそれに伴う形状や素材の変化を見せてきた。
消防で用いるヘルメットも、“災害”という敵から“消防士”という戦士を守るための“防具”であるといえる。

災害現場という場所は何が起こるかわからない。
突如、倒壊物が襲い掛かってきたり、足場が崩れて転落する可能性も大きいわけだ。頭部に大きなダメージが加われば命に関わる結果となり、脳に障害を与える危険もある。災害現場であれば頭を打って意識を失っている間に要救助者の生命は危険に曝され、隊員自身も更なる悲劇に見舞われないとも限らない。
つまり、消防におけるヘルメットとは隊員はもとより、要救助者や仲間の命を結ぶ重要な存在であるといえる。ここでは世界の消防が使用する「消防ヘルメット」にスポットをあて、郷土を災害から守ってきた消防士たちの魂を伝えていく。



11|12 2020/FIRE RESCUE EMS vol.94

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