2016.04.11

コラム/小説FIRE HELMET COLLECTION,消防ヘルメットコレクション

No.45 旧東ドイツ 東ベルリン消防

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命の絆 消防ヘルメット

THE BOND OF BROTHERHOOD
助けを求める声があるならば、いかに過酷な災害現場であっても身を投じていく消防士たち。時代や国境を超え、すべての消防人の心にある博愛の精神が、彼らを突き動かせる。隊という名の“家族”が、危険な現場で協力し合い“人命救助”という任務を成し遂げる。「消防ヘルメット」はそんな彼らの活動を支え、危険から身を守る盾となってくれる。現場には要救助者、仲間、そして己の命をつなぐ博愛の絆があり、その象徴が消防ヘルメットといえるであろう。

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旧東ドイツ 東ベルリン消防のハンスVOSS社のポリエステル製ヘルメット

第二次世界大戦後、ドイツ第三帝国の崩壊と共に連合国はドイツへ進駐軍を配備したが、やがてソビエト連邦を軸とした社会主義制と、アメリカ・イギリス・フランスなど西欧側の民主主義制とがドイツ国内を二極分断し、占領政策が進められた。当時、東ドイツの首都であるベルリン内でも東(OST)と西( WEST)に分断されたのであった。

東ベルリン市内から境界を越えて西ベルリンへの脱出を企てる市民が相次ぎ、やがてはこの境界線に頑丈で長い塀が築かれた。これが世に言う「ベルリンの壁」であり、この壁が長い間東西を分断した。そして東欧での民主化のうねりが生じ、1990 年11 月、ついにベルリンの壁をハンマーで打ち砕く多数の若者に象徴される東西解放をみたのだ。東西ドイツのリ・ユニオン(再統合)である。

東ドイツの消防ヘルメットといえば、戦後は軍用ヘルメットを流用し、1961 年にドイツ工業規格GDR194−21に基づき、より消防活動にふさわしいヘルメットとしてスチール製が採用されることになる。だがこれは西ドイツで使われていたDINI140940スタンダードによるヘルメットと同じ仕様であった。

1980 年になって東ドイツではガラス繊維で強化したポリエステル製消防ヘルメットを誕生させ、近代化が図られた。1982 年頃に発行された西ドイツ側の消防関係出版物「112FEUERWEHR 」にはこのヘルメットの存在について「東ドイツで新型消防ヘルメットが火災現場で見受けられる」と記述している。しかし「詳細は不明」との記事で気になるところではあった。 

この新型消防ヘルメットこそが今回紹介するもので、東西ドイツ再統合によって東ドイツ側から西欧へ流れ出してきたものだ。

1961 年から使われていた消防ヘルメットと大きく変化した点は、まず材質がガラス繊維(ガラスファイバー・ポリエステル)となった点だろう。これにより軽量化と共に対感電性能が大きく向上し、活動性と安全度が高まったといえる。また、帽体表面がメタリックな真空蒸着メッキされていて、対輻射熱性能を確保している点も特徴だ。

半球状の帽体に、全面の大きな顔面保護シールドに通気孔を設け、首頚部は皮革製しころを取り付けている。長年仕様がベールに包まれていたこのヘルメットだが、実物を見ても唯一製造メーカーだけが判別できない。たぶん東ドイツ国家製造工場の一つであったハンスVOSS 社で製造された物ではないかと考えられる。 

PROLOGUE 災害現場で活動する隊員たちの姿で、ひときわ目を引く存在が「ヘルメット」である。特徴的なデザインには様々な機能が秘められており、頭部保護という同じ目的を持ちながら国によっていろいろなパターンを見ることができる。そもそもヘルメットは軍事用として誕生し、古くから頭部に直接加えられる打撃力を減少し、直接的な負傷を防ぐことに重きがおかれてきた。後に用途ごとに進化を続け、使用される環境によって求められる性能やそれに伴う形状や素材の変化を見せてきた。消防で用いるヘルメットも、“災害”という敵から“消防士”という戦士を守るための“防具”であるといえる。  
災害現場という場所は何が起こるかわからない。突如、倒壊物が襲い掛かってきたり、足場が崩れて転落する可能性も大きいわけだ。頭部に大きなダメージが加われば命に関わる結果となり、脳に障害を与える危険もある。災害現場であれば頭を打って意識を失っている間に要救助者の生命は危険に曝され、隊員自身も更なる悲劇に見舞われないとも限らない。つまり、消防におけるヘルメットとは隊員はもとより、要救助者や仲間の命を結ぶ重要な存在であるといえる。ここでは世界の消防が使用する「消防ヘルメット」にスポットをあて、郷土を災害から守ってきた消防士たちの魂を伝えていく。

SPRING 2016/FIRE RESCUE EMS vol.73
 

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