2024.01.05

ロープレスキュー ここが知りたい!ロープレスキュー ここが知りたい

【第18回 担架の要救、下から見るか? 上から見るか?】
〜連載企画 ROPE RESCUE COLUMN ロープレスキュー ここが知りたい!〜

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連載企画 ロープレスキューコラム

皆さんお疲れさまです。ロープレスキューやってますか?今回は担架の介添(アテンド)について考えてみましょう。
担架に要救助者を収容して救出する際、そこに介添を置くことは現代の救助活動においてはごく基本的な対応となります。では、なぜ介添隊員を置く必要があるのでしょうか?

要救助者の管理のため

まず、要救助者は皆さんと違って、担架に縛り付けられたり、高所に宙ぶらりんにされることに慣れていません。要救助者にとっては強い不安感を感じるものです。これをやわらげたり、取り除いたり、もしくは不安に駆られた要救助者が不穏状態になった際に制止したりする必要があります。
次に、要救助者は何らかの傷病を患っている可能性も高く、救助活動中も継続した処置と観察を行う必要があります。とくに、嘔吐や吐血、呼吸の変化、意識レベルの変化などに即座に対応するためには、常に隊員が寄り添い続ける必要があります。
さらに、引き上げにしろ、吊り下ろしにしろ、担架は壁面と摩擦したり、突出物に引っ掛かることがしばしばあります。これを回避するために、担架を操舵してトラブルを回避したり、起きてしまったトラブルを解決するための人間が必要です。

介添隊員に求められるもの

前述の内容をすべて満たせる必要があります。要救助者の不安を取り除くためには高いコミュニケーションスキルが必要で、身体的・精神的・技術的な余裕がないと要救助者と通じ合うことはできないでしょう。当然、高い救急の知識と経験も必要です。固定や止血などの処置や、酸素や自動心臓マッサージ機などの機材がずれたり外れたりしないように監視したり、修正したり、要救助者の変化を見逃さずに注意深く観察できなければなりません。
担架を取り回すためには長い足と体幹が必要です。壁面を観察して、どういった動きが必要になるかはロープアクセスやクライミングの経験が役に立ちます。救助方法によってはロープ資器材の操作やトラブル対応も必要なため、ロープ技術全般に習熟している必要があります。

要救助者の縛着や二次確保など担架周りは介添隊員の責任分野

担架に対するポジションを考えてみよう

ここまでをふまえて、担架の介添隊員は「担架の下」につくのが良いのか、「担架の上」につくのが良いのか考えてみましょう。
介添隊員が担架の下についた場合、隊員からは要救助者の身体の大半が死角になります。また、つま先や頭部には手が届かない方も多いのではないでしょうか?さらに、壁面の障害物を回避するために担架を引こうとしても、自分のお腹でつっかえて、さほど距離を取れないことが多いです。
介添隊員を上に置いた場合はどうでしょうか。要救助者の頭頂部からつま先までを視野に収めることができ、手も届きます。担架のブライドルのなかに身体が入り込むため、壁面から下半身いっぱいの距離を引き離すことが可能です。

オーバーハングや開口部を通過する場合、上げ・下げにかかわらず、上についているほうが格段に安定します。また、下方に障害物や突出物がある場合や地面に近い位置では、メインロープの破断やコントロールミスの際、落下・激突するおそれがあります。この場合、介添隊員が担架の下にいると足を挟まれたり、足が引っかかって逆さになったりするリスクがあります。
担架上に資器材が組み込まれているシステムの場合、そのトラブル対応にあたる必要があるため、上にいた方が良い場合も多いです。(もちろん、体格が大きくて手が届く場合は問題ありません)
こういった観点から、担架の介添は上につくことにメリットが多いといえます。

下にいたほうが良いときもある

では、担架の下に介添隊員がつくことはないのでしょうか?もちろん、そんなことはありません。傾斜が90度を下回る場合、担架の下側にいるほうが担架を支えやすいことが多いです。足で踏ん張ることができないフェンスなどがあれば、下側で踏ん張るしかありません。
また、嘔吐の対応の際も下の位置から行います。写真の対応方法は一例ですが、処置の内容によっては要救助者の上から屈む姿勢では難しいものもあります。

ほかにも、不安がる要救助者と手を繋いだり、顔を寄せて話しかけるには下側にいる必要があります。子どもや障害者など、特段の配慮が必要な要救助者に対してはそういった対応も必要です。

救急の知識・経験が重要!

介添隊員に要求されることの半分は要救助者に対するケアです。これがない介添隊員だと、単なるオモリでしかなくなってしまうこともありえます。これらはロープレスキューの訓練で培われるものではなく、ロープレスキュー事案による経験が必要なわけでもありません。普段からの救急活動で必要なことと、救急事案で見て感じている内容がほとんどです。
救助隊員のなかには救急の資格がなかったり、救急隊の経験がないという方もいらっしゃると思います。そういった方は主体的に傷病者を見る、救急隊がどんなことをしているか見たり聞いたりする、そもそも女性、子ども、老人がどういうものなのかを見て知るという能動的な取り組みが不可欠です。
当然、救急の経験が豊富でも、残り半分の要素は担架の取り回しやロープ技術などのスキルとセンスです。介添隊員というのは、チームのなかでもっとも優秀な人間が務める必要があるハイレベルなポジション、まさにヒーローのポジションといえるでしょう。

office-R2の講習ではレベル3(3日目)でこのような内容を履修します。興味のある方はぜひ受講してみてください。

大西 隆介(おおにし りゅうすけ)
大学時代に公共政策を学び、山岳部などの経験からロープレスキューの世界へ。日本の労働安全法令を踏まえつつ消防組織に適した救助技術を研究している。救助大会「縄救」などのイベントも主宰。通称「ジミーちゃん」

office-R2 ロープレスキュー講習主に10.5mm〜11mmのロープ資器材を用い、国内法令に準拠しつつ、現場に即した技術を重視。高所作業や競技の技術ではなく、消防活動におけるベストを提案する講習。レベル1〜2では「ロープ高所作業」「フルハーネス」の特別教育修了証が交付される。講習などの情報はHP、Facebook、Instagramなどで随時更新。

お問い合わせ090-3989-8502
ホームページhttps://r2roperescueropeacce.wixsite.com/office-r2

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