2021.04.26

消防活動・訓練・その他活動ロープレスキュー ここが知りたい,救助訓練

【第5回 なぜロープレスキュー なのか?】
〜連載企画 ROPE RESCUE COLUMN
ロープレスキュー ここが知りたい!〜

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連載企画 ロープレスキューコラム

皆さんこんにちは。この一年、この誌面にてロープレスキューについてコラムを書いてきましたが、なかには「三つ打ちからわざわざ変える必要があるのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。なぜ編みロープに移行していく必要があるのか、よく言われることを例に考えてみたいと思います。

三つ打ちの技術は完成されている

そのとおりで、とくに操法は非常に洗練された救助技術です。約60年前に始まり、40年以上前にほぼ完成した技術です。しかし、ヒューマンエラーや安全率であるとか、労働安全衛生法であるとか、そういった安全思想が発達する前に完成しました。その結果、現在の災害対応や消防活動とはあわない部分が出てきています。例えば、万が一のときの確保(ビレイ)は、残念ながら国際基準どころか国内の基準も満たせません。皆さんご存知のとおり、世間の新しい知見に基づいて救急や救助の技術は発展していくもので、完成してしまったものは古くなっていくものなのです。

三つ打ちで十分対処できている

多くの消防職員にとって三つ打ちによる救助技術は習熟され精度の高いものです。多くの事案が解決されていることも事実です。問題は、それらの活動が改善点のない最高の活動であったか?を振り返って向上していく必要性があることです。
具体的には、低所転落の要救助者がいたとして、救護のためにプロトコールどおりの人員で処置・固定したか?進入や引き上げは動揺なく、法令で作業員に定められている程度の最低限の安全性は確保されていたか?活動時間は必要最低限だったか?活動人員の疲労や身体負荷は高すぎなかったか?などです。
メインロープが解絡し、隊員が転落する有名な動画があります。あれが現場であれば隊員は命を失っていたでしょう。身体確保は世界中で検討されましたが、現在に至るまでどの国でも実用化されませんでした。「体力や精神力があれば止められるはず!」旧日本軍ではあるまいし、無理なものは無理だと認めなければなりません。
市民は消防本部や隊員を選ぶことはできません。災害現場では消防以外の選択肢もありません。一方的に享受するしかない住民サービスが、もし他の自治体と比べて劣っていることがあれば、やはりそれは問題だと思います。これからさらに良い活動をするために、三つ打ちではできなかったことを編みロープで模索していきませんか?

今までやってきたことを否定するのか?

僕や、おそらくほかのインストラクターの方も、多くのベテラン消防職員のこれまでの活躍を否定するつもりはありません。例えば、バックボードが導入されたとき、コート型の防火衣が廃止されたとき、ホースの規格が統一されたとき、それはかつての活動の否定だったでしょうか?進歩し改善することは、過去を否定することではありません。(もちろん、これからの未来もそれで十分だと言うのであれば、否定しなければなりませんが…)先ほど触れたような大きな変革に比べれば、三つ打ちロープか編みロープかは、それほど大きな変化ではないように感じます。

三つ打ちや操法は基礎基本だ

救助隊にはさまざまな装備があり、それらを活用して任務に当たるのが「基本」かと思います。例えば、ポンプ隊にポンプがない、救急隊に救急資器材がない想定は「基本」ではありませんよね。活用できる資器材が限定されている消防隊が、やむを得ず救助隊を待たずに活動する場合もあるでしょうから、基本訓練として習熟する必要があります。しかし、活用できる資器材を持っていたり、それを導入して活用すべき救助隊にあっては、消防隊の緊急救助と同レベルの活動では不十分ではないでしょうか。

伝統は守るべきだ

消防活動は市民の生命と財産を守るのが一番の目的ですので、伝統は二の次にするのが職責かと思います。もちろん、前述のとおり消防職員としてそれなりに習熟することは必要だと思います。

消防隊や他市との連携ができなくなる

これは組織規模にもよると思いますが、例えば救助隊が3名以上勤務している本部の場合、三つ打ちだったとして技術的な活動を消防隊に任せるでしょうか?少なくとも専任救助隊であればそのようなことはしないはずです。緊援隊においても、他市と混成状態で三つ打ちロープの設定をすることはないと思います。
そもそも編みロープを主軸にしたからといって、三つ打ちロープを全廃して記憶をリセットするわけではないですから、十分連携はできるでしょう。また、日本では中小規模の本部で編みロープの実用化が進んでいます。大規模本部にあわせるために中小本部が活動の質を落とすことがないよう、大規模本部さんにはプライドを見せていただきたいものです。

編みロープは難しい

確かに編みロープは応用の幅が広く、まだまだ進化の途中です。しかし、基本的な結索・降下・登はん・引き上げ・確保などの技術は、三つ打ちと比べて何ら難しいものではありません。ポンプの運用や予防に危険物、ましてや救急と比べたら覚えることは極端に少なく、ちょっと勉強すればそれなりにできるようになります。僕が携わった本部では約3年でほとんどの活動が編みロープに移行しました。前述のように中小規模の本部では編みロープが進んでいます。特段、彼らがヒマだとか頭が良いわけではないでしょうから、あとは意識の問題だと思います。

編みロープは遅い

実は、遅いかどうかは訓練に比例します。7mの引き上げ訓練棟で、支点作成から結索、ロープ設定、ライフラインを併用しGLまで降下、登はんで帰着までの一連の流れは基準タイム3分(1名)で実施可能です。若い職員なら2日くらい練習すれば余裕でクリアできます。事前設定のある大会のイメージで比較され、遅いと言われがちですが、実際には早い活動が可能です。(次回のコラムでは、訓練メニューとして編みロープ技術の「操法」を紹介しようと思っています。お楽しみに!)

そもそも編みロープのメリットって?

編みロープは適切な資器材を使うことで労力を減らし、2人分の荷重を支え、落下の衝撃も安全に受け止めます。例えば、倍力を使って、2人で2人を引き上げたり、仮固定して姿勢を変えたり、とっさに手を離すこともできます。メインの支持物が崩壊したりして隊員が転落しても、安全に確実に静止できます。隊員が宙吊りになっている間、他の隊員が動けなくなることもありません。三つ打ちでできることはより簡単安全に、三つ打ちでできないこともできるのがメリットです。

操法や大会で学んだことは災害で役に立つ

もちろんそうです。チームワークや体力作り、トレーニングの方法など学ぶことはたくさんあります。しかしながら、操法や大会が現状の実災害対処要領から乖離しているのは皆さんも自覚しているはずです。もちろん、通過儀礼として若い方が経験するのは良いことだと思います。しかし、前述のような効果は、実災害に対応するための訓練で得られるよう、諸先輩方が訓練してやるべきではないでしょうか?若手にさせるばかりではなく、先輩方も引き続き新しい取り組みを続けていきましょう。

救助大会や操法は廃止せよ!?

最近、若い方を中心にこういうことを言う人もいますが、僕は賛成ではありません。前述のとおり、消防隊が火災現場や災害現場で緊急救出する際には役立つ技術です。また、近隣本部との交流や共通の話題のためにも必要だと思います。その仕事を選んだ以上、とりあえずは命じられた仕事をすることが第一です。ペーペーが言いたいことだけ言っていても、通る話も通らないと思いますし。
一方で、「春から大会の練習しかしない」「練習中の救助隊には指令がかからない」「成果を出さないと救助隊にはなれない(成果を出せば誰でもなれる)」というような本部が存在するのも事実です。一年中、操法しかやらない救助隊もあると聞きます。消防職員として、救助隊員としての職責とプライドを思い出し、競技にのめり込むのはほどほどにお願いします。(公金の使い道もしっかり考えましょう)
また、前述のような若手に、ちゃんとやりがいを伝えられないのは先輩方の責任でもあります。良いチームを作るためにも、明確な目標と効果、コミュニケーション、そして、させる側の責任感は重要です。

いかがでしたでしょうか?編みロープはあるけど…という本部、まだ導入していない本部、いろいろあるとは思います。しかし時代は令和、現実に編みロープの普及は進んでいますし、いつかは避けて通れない道のりです。ぜひ、これからの活動や訓練を考えるきっかけにしていただければ幸いです。

大西 隆介(おおにし りゅうすけ)
1987年生まれ。大学時代に公共政策を学び、部活では登山やクライミングに没頭した経験からロープレスキューの世界へ。日本の労働安全法令や消防組織に適した救助技術を研究している。救助大会「縄救」や「日台消防交流会」などのイベントも主宰。

office-R2 ロープレスキュー講習主に11mmロープと欧米の資器材を用いた「目的としてではなく救助の手段としてのロープレスキュー」技術講習。レベル1~2講習は基礎的な技術と知識のほか、国内法令や安全管理について学ぶ。受講者には「ロープ高所作業」「フルハーネス」の特別教育修了証が交付される。
講習などの情報はHP、facebook、Instagramなどで随時CHECK!

お問い合わせ090-3989-8502
ホームページhttps://r2roperescueropeacce.wixsite.com/office-r2

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