2017.10.02

消防本部・消防署FIRE REPORT,岩手県,災害

FIRE REPORT #144 リアス式海岸での大規模林野火災-町を救った防ぎょ活動

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釜石大槌地区行政事務組合消防本部は、釜石市と大槌町の消防本部が平成10年4月1日に広域合併し発足、管内面積約640?を管轄している。今回訪れた釜石市は日本の近代製鉄発祥の地であり、さらに三陸漁業の中心港としても発展。リアス式海岸を有した風光明媚な地であるが、過去再三にわたり津波による大きな被害を被ってきた。

釜石大槌地区行政事務組合消防本部

特に平成23年3月11日に発生した東日本大震災では想像を絶する大津波により壊滅的な被害を受けた。消防本部においては内陸部に位置する小佐野出張所を残し、釜石、大槌の消防署、鵜住居出張所の庁舎が被災し使用不能となり、加えて消防車両17台と多くの資機材を失った。その後、釜石消防署は平成26年4月1日より釜石市鈴子町の新庁舎で運用を開始。管内はいまだに多くの被災住民が防災上不安な応急仮設住宅に居住している状況下にあり、職員は「安心と安全」を確保するため一丸となって日々取り組んでいる。
釜石市の地域性としては多種の山火事資機材や水難救助資機材を配備しているのが特徴。また、地域防災の要である消防団員は8分団679人が市内で活躍している。
(※平成29年4月1日現在)

東日本大震災の被害
町の再生の様子
「避難道路」にある看板
東日本大震災発生から約6年半、インフラは復旧したものの盛土整備などの工事が続き、町の再生は道半ばだ。港が見渡せる浜町の高台に通じる通称「避難道路」には地域住民の防災意識を高めようと、同じ場所から撮影された津波の猛威を象徴する看板が設置してあった。

リアス式海岸での大規模林野火災
町を救った防ぎょ活動

平成29年5月8日11時56分、のちに約413ヘクタールを焼損する大規模林野火災が発生した。人的被害・住宅被害情報なし。鎮圧までの7日間、消防・自衛隊・警察の総動員数2,697名、ヘリ総数31機がどのように防ぎょ活動を行ったのか見ていきたい。
釜石市平田では当日12時の最大瞬間風速が25.4m/s、13時30分には31.6m/sを記録。冬の乾燥が強風とともに春まで続く地域特有の環境があり、釜石市は過去に幾度となく大規模林野火災を経験していた。火災発生当時、庁舎から撮った記録写真が風の強さを物語る。

火災の様子14時25分
火災の様子14時30分

上の写真はそれぞれ14時25分ごろと14時30分ごろ。リアス式海岸の複雑な谷あいで風は巻き、西からの風を押し返すように火災は市街地へ向け広がった。
「12時の防災ヘリ要請では強風により活動不能で帰投となった。現場への陸路は遊歩道や林道しかなく、海側は200m級の断崖絶壁が連なり入山は難航した。延焼のスピードから火災を市街地へ近づけない防ぎょ体制と警戒注水を優先し、尾根を絶対越えさせまいと活動にあたった」と同消防本部消防次長金野消防司令長は語る。

火災発生時の上空写真
市街地に最接近した際の上空写真

過去の経験が生んだ連携

青出浜の揚水状況
異変にいち早く気づいて準備していた地元の釜石市消防団第三分団第四部の団員とともに、唯一上陸できる青出浜へ定置網船で偵察に向かう。半島に川などの水利は一切なく、海から可搬ポンプを伸ばして消火活動をおこなう。
神社付近の延焼状況
当初火点は民家から遠かったが、地元の祭りで縁がある神社に火の手が迫る。過去の経験から釜石市消防団では林野火災時の中継体制を消防演習で熟知していた。漁船や軽トラックなど移動手段の協力も後のスムーズな活動に繋がった。
釜石市消防団の消火活動
急勾配で足場が悪い地形に困難を極める。同消防本部は県内応援隊を要請。地形に詳しい森林組合の助言のもと、下から上がるのではなく尾根伝いに上から下がりながら活動を展開。道幅の極めて狭い林道を7台程の軽トラックで約15分かけ部隊を搬送。最終的にホース延長は海岸から山へ1.5km、70本に及んだ。

5月9日には自衛隊大型輸送機CH-47(チヌーク)9機が参加。3~4機でフォーメーションを組み、海水を汲んでは消火するローテーションを実施。5~6tの水量と水圧で防ぎょ活動にあたった。
自衛隊中型ヘリと合わせて最大一日527回約2,347tという圧倒的な散水量であったが、入山した隊員に水圧が及ぶ危険性があったため、綿密な打ち合わせのもと消防は活動範囲をずらし行動した。
消防からは岩手・青森・秋田等から延べ8機の防災ヘリが出動した。空からの迅速な消火活動と13日・14日の降水効果もあって、15日13時に鎮圧が発表された。

自衛隊大型輸送機CH-47の給水
上空偵察へ向かう防災ヘリ「ひめかみ」
上空からの熱探知、空中消火へ向かう「ひめかみ」
高さ20m付近での幹内延焼、幹内部の延焼状況
写真は幹の内部が延焼する残火の様子。高さ20m以上直径約80cmの幹の内部が焼けて空洞になっており、地上から約6mの場所で煙を確認。チェーンソーで切り倒し一本ずつ消火するケースもあった。

残火を見逃さぬよう、地上では背中にジェットシューターを背負った延べ人数約200名の県内応援隊の隊員が徒歩で山中へ。
海上からは海上保安庁巡視船2隻が、上空からは防災ヘリが赤外線装置等を活用し熱源を確認しながら消火にあたった。

県内応援隊現場指揮本部会議
残火確認
海上からの延焼状況
上空からの延焼状況

5月22日15時鎮火が発表された。
火災は半島全体を包み込み、住宅まで約400mの地点まで燃え広がったが、各機関の円滑な連携により人的被害・住宅被害はなかった。
「過去の災害経験から“日ごろの備え”が一番重要だ」と関係者は口をそろえる。

被害区域と活動状況
被害区域と活動状況

【取材協力】
釡石大槌地区行政事務組合消防本部
釡石消防署/岩手県釡石市鈴子町16番19号

AUTUMN 2017/FIRE RESCUE EMS vol.79
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